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ビジネス・インサイト―創造の知とは何か (岩波新書)経営学の新たな方法論を提起―「暗黙の認識」と「対象への棲み込み」

 「ビジネス・インサイト」とは、一見してクルマの名前みたいな少々聞き慣れない言葉だ。辞書的に“インサイトinsight”とは、「洞察(力)」とか「識見」といった意味だが、本書では「将来を見通す(見通していく)力」という含意で使われている。そして、「実証的経営(論理実証主義)」の陥穽と限界を訴え、物理化学者にして哲学者、マイケル・ポランニーが展開した「知の暗黙の次元(暗黙の認識)」に依拠しつつ、ビジネスにおける「創造の知」などを論じている。また、その具体的な事例を流通業の分野において示しているのも本書の特長だろう。



 著者の石井淳蔵氏(流通科学大学学長)は、日本におけるマーケティング・マネジメントをコアとした経営学の中心的存在だが、当書ではイノベーティブなビジネスモデルの創発やシナリオ創新に関して、ビジネス・アナリシス的な見方を排し、「偶有性」(必然でもなく不可能でもない様相)を包摂した「新しいケース・リサーチ」などを提唱している。とりわけ、石井氏はポランニーの語る「対象への棲み込み」を強調する。それは「インサイトに至る過程には対象に棲み込む(dwell in)という機制(メカニズムのこと-引用者注)が働いている」からだ。



 この過程を石井氏は重視する。なぜなら「知は関係あるいはプロセスの中で創造される」からだ。氏は「優れた経営者は、事業のインサイトを得てビジネスの発展を図る」とし、「経営者は跳ばなければならない」と説く。こうした意想は、私としても十分共感でき...


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